『パリ・オペラ座のすべて』
『パリ・オペラ座のすべて』
監督 フレデリック・ワイズマン
バレエ好きとしては見逃せない作品でした。
余計なナレーションがなく、稽古場から裏方、本番の様子をひたすら追っていく。
シンプルなドキュメンタリー。そしてとても贅沢。
その昔ちょこっとだけバレエをかじっていたくらいなので分からない専門用語も多いのだけれど、そんなのは関係なく画像にかじりついて見てしまった。
民放のように余計な演出をしないで故意にドラマチックにしていないからか。しかし十分にドラマ。一人一人が真剣に毎日きっと闘っているんだろう。仲間と自分と。
すごそうな世界だ。
特に誰かにスポットを当てているわけでもないので、コールドバレエ(群舞)にも目がいく。
コールドの練習風景を流していたあとに、本番のエトワール(主役)も入った映像が流れたのだけれど、不思議とコールドに目がいった。今までなら絶対にエトを見ていたのに。
モダンも苦手なのだけれど、練習風景を見て多少解釈を聞いてから見るとまた全然違ってみえる。ちょっと面白さに触れた気がする。
裏方風景も興味深い。
衣装にビーズを手縫いしていたり、染めていたり、何かを作っていたり。
あとは掃除している人だったり、受付だったり、食堂だったり。
芸術監督のマダム(オーラ出まくりのショートカットのマダム)もかっこよかった。
『オペラ座の怪人』で有名な地下水路もちょこっと写りました。
本当にあんな感じなのね。さすがにディズ○ーランドも真っ青なあの仕掛けはないでしょうが(笑)
ダンサーの一人が、自分の与えられた役にクレームを言う場面が非常に印象的。
いわく、この役はハードで自分には怪我を負うリスクがある、コントロールしていかないと踊り続けることができないから替えてくれ、と。
解決したかは分らなかったが、芸術監督のマダムはOKしてました。
自分でコントロールっていうのがやっぱりプロよね。なんかプロとしての誇りを見た一瞬だった。
そしてとにかく、バレエとは肉体美だと感じた。
なんであんなに高く軽く飛べて、優雅に回って、腕を伸ばして動かすことができるのだろうか。
あぁ、いい映画だった。